以下の記事は全く医学的専門知識のない一飼い主が、獣医師との会話や本・インターネットで集めた情報を元に、個人の記録としてまとめたものです。書かれてあることには医学的に間違ったことも含まれているかもしれませんのでご了承ください。
①(昨日の記事)の続きです。よかったら最初からお読みください。
2010年12月8日、隣町の心臓専門医を訪れました。予約をしていたにもかかわらず、急患が入るなどして2時間くらい待たされましたが、その専門医は麻酔をせずに小虎を超音波検査し、とても丁寧に説明してくれました。
ものすごい早口の先生なので、聞き取るのが大変でしたが、相方が一緒にいたので後から相方がきちんと紙にまとめてくれました。その専門医は、専門用語で分からないところがあるとそれもきちんと説明してくれました。少しの嫌な顔も見せず。この先生は信頼できる、と思いました。
私たちが掛かりつけだった獣医から得たものは単なるDiagnose(診断)であり、Prognose(予見・見通し)ではないと専門医にいわれました。(掛かりつけだった獣医は、Diagnose(診断)すら正しくしていなかったことになりますが。)
専門医は、改めてDiagnose(診断)を下し、Prognose(予見・見通し)を行いました。それは今後どうするかの方針、どうすれば状況が良くなるか、という提案だったのです。小虎がこれまで処方されていた薬、フォルテコールには、状況をなんとか今の状態に保つことしかできていませんでした。掛かりつけだった獣医にずっと通っていたら、なんら詳しいことすら知らずにある日突然小虎を失っていたことでしょう。
後から分かったことで、これも私たちを慰めたのは、それでもそれ(フォルテコールを与えること)がおそらくできる限り最善の方法だった、と言うことです。
小虎の肥大型心筋症(Hypertrophe Kardiomyopathie)の原因は、先天性の「動脈官開存症(Persistierender Ductus Arteriosus / Patent ductus arteriosus、以下PDA)でした。
PDAとは。本来、人間でも動物でも、心臓から肺にいく動脈管が、生後すぐに閉鎖するのですが、それが閉鎖せずに開いたままになっている心臓病のことです。
胎児の間、動脈管は大動脈と肺動脈を結び、胎児は肺を使わず酸素を取り込むため、心臓から肺への血液の流れをほとんど必要としません。そのため、無駄な回り道をしないように動脈管があるのです。生まれるとすぐに肺呼吸が始まり、血液の流れが変わるため、必要のなくなった動脈管は生後1週間の間に普通は閉じるのです。しかし、それが閉じずに開いたままになっているのが、このPDAなのです。
PDAの場合、血液の流れが大動脈から肺動脈に戻ってしまうため、肺に大きな負担がかかります。そのため、肺に一定以上の水が溜まってしまう、肺水腫などの症状が現れることになります。肺水腫がひどくなると心不全になってしまいます。
なぜ心肥大がおこるかというと、血液が逆流することによって心臓が圧迫され、そのリアクションとして心臓がその逆流に耐えられるように徐々に心筋を強化することによって左心室が肥大してしまうのです。心筋が厚くなると心臓の弁がうまく機能しなくなります。弁がうまく閉じたり開いたりしていないため、心雑音が聞こえるのです。(どのような心雑音か、こちらのサイトで音を聞くことができます。ドイツ語ですが、スクロールして下のほう、Kontinuierliches Geräusch: und mit PDAというところをクリックしてみてください。小虎の心雑音はまさにこの音でした。)
PDAは犬に多く、猫では珍しい病気だと言われています。実際、インターネットで調べたときも、犬では多くの症例が見つかったのですが、猫ではほとんど検索に引っかかりませんでした。
専門医が言うには、猫の場合は犬と違い、自分で行動を制限したりすることで、うまく肺に負担がかからないような体勢を取ったりして調節しているとのことでした。なので、猫の場合はそう早く肺水腫の症状が現れないそうです。
専門医も言っていましたが、インターネットの情報によると、PDAをそのまま放置しておくと、長くても3年くらいしか生きられないだろうと言うことが書かれてあります。人間の場合は多くの場合、生後すぐにいろいろな検査をすることで、PDAを早期に発見することができ、見つかれば生後2,3ヶ月の間に手術し、その後は普通に生活することができるということでした。
小虎の場合、家に来た時点ですでに生後4,5ヶ月でしたので、生後すぐの手術と言う選択肢はなかったわけです。成長してからの手術もできることはできますが、成功率は生後すぐのそれと比べると低いそうです。
また、小虎のPDAはすでに大きくなっており、さらに専門医に見せた時点で肺に水が溜まっているということを言われました。これは致命的なことだったと思います。そのような状態であるのに、少しもつらそうな様子を見せない小虎に専門医は驚いていました。本来ならばかなり苦しいそうです。小虎がこれまで現状維持できたのは、ずっと飲ませ続けてきたフォルテコール(血管拡張剤)のおかげもあるだろうとも言っていました。
猫は病気がかなり進行するまで症状を表にあまり出さない、ということを改めて思い知らされました。
小虎にも、手術という選択肢があるにはある、ということを言われました。
小虎の場合、手術によってPDAを閉じると、肺にそれ以上の負担がかからなくなるため、肺水腫の危険は免れます。心臓はいくらかは小さくはなりますが、しかしながら完全に元に戻るわけではありません。手術後も薬は飲み続けなければならないだろうということを言われました。しかし、状況は随分改善されるかもしれない、とも言われました。
このまま手術せずにいると、後1,2年の命かもしれないと言われました。それより早くなる可能性もある、と。
手術には二つの方法があります。一つは開腹手術によってPDAを縫ってしまう手術。その場合、心臓自体にメスを入れるため、負担はかなり大きくなります。もう一つはPDAの穴にコイルを入れてふさぐ方法です。その場合はカテーテル手術となります。(コイルとはどんなものかの写真がこのサイトにあります。ドイツ語ですが写真を参照ください。)
私たちがそのとき訪れた専門医は、前者の手術ができる、と言いました。開腹手術のほうです。一方、私たちの引越し先、今住んでいる町の近くの大学病院には、もう一方の手術ができる専門家がいるという話でした。
その日、2010年12月8日は、とりあえずの肺水を取り除いてしまわないことには手術もできないため、フォルテコール(血管拡張剤)にあわせて利尿剤(Dimazon)と心臓の動きを助ける強心剤(Atenolol)を処方されました。
その一週間後の12月15日と、さらに23日にも、利尿剤の働きを見るために専門医で検診を受けましたが、残念ながら期待したような変化はありませんでした。そのため、現状で手術をするのは無理だと言われました。肺の水が減り、心房が少し小さくなり、また血液の流れにリズムが戻る必要がある、と。
手術は前回も言われたように、いずれにしろリスクが高く、手術中に命を落とす可能性もあるかもしれないと専門医は言いました。しかしながら手術をしないと、1,2年のうちに小虎は肺水腫で苦しむことになり、その場合は別の選択肢(安楽死)も考慮に入れなければならないかも知れないとも言われました。あるいは、もっと早くに突然死んでしまうこともあるかもしれないとも。
手術ができるような状態になれば、手術をするなら早いほうがいいが、するかどうかの選択はもちろん飼い主であるあなたたちに委ねる、と言われました。
もしカテーテルでコイルを入れる方法を、引越し先でするならば、そこの専門医に紹介状を書く、と言ってくれました。
ただ専門医は最後に、正直な話、このような事例は猫ではこれまでに1,2件しかなく(ドイツで)、そのため成功するかどうかの統計が少なすぎる。もしこれが僕の弟の飼い猫なら、僕は弟に手術を勧めないだろう、と洩らしました。
結局、専門医の診断は正しかったわけです。小虎は手術することもなく、それから3ヵ月後に旅立ってしまいました。
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1周忌なのですね。
大変だったのですね。
しかもめずらしい病気だと、飼い主も、ましてや獣医の方も最善の方法を探すのは難しいですよね。
あと、よい獣医さんをみつけるのはとても大変だと思います。私も分からないことを分からないと言ってくれる先が好きです。なかなかいないですけどね。
アメリカは訴訟とかがあるせいか、もしくは私が個人でひっそりやってるような所に行くせいか、あっさりと専門医を紹介してくれる所が多い気がします。
私も獣医に言われました。
「猫は病気を隠すのがとてもうまい」と。
痛いのだと言ってくれたらよかったのにって。
でももしかしたらそう言われてたのかもとかいろいろ考えます。
でもKotoraさんはいろいろしてあげて子虎ちゃんも幸せだったと思います。Kotoraさんちの子じゃなかったらここまで長く生きてなかったと思いますよ。
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素晴らしいドクターに巡り会えたこと・・・
kotoraさん、それだけでも幸せですね。
納得のいく治療なら、たとえ死期が早くなってもそれはそれで仕方ないことだと思えても、そうじゃなきゃ、後悔だけが残ります。
先代パティーも肺に水が貯まり3度目の水を抜いたあと、駆け足で逝ってしまいました。
私には「悲しみと自責の念」が残っただけ・・・
あの子が駆け足で逝ったことは、長いこと苦しませずに済んで、よかったのかも?
5年もの月日が経って、やっとそう思えるようになった私です。
こんなにも、愛し尽くしてくれたkotoraさんに小虎くんは感謝していますよ。
私の住む大分に、動物のましてや心臓の専門医なんていません。
kotoraさんの記事は永久保存版です!
分かりやすく、まとめてくださってありがとう。
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ブログを始めるまで病気の事は全然知らなかった。
今も皆さんの所で知って調べるとか、本当に無知だよ…..
kotoraさんは本当に熱心で、小虎君の為に頑張ってるのを
小虎君も解ってて頑張ったよね。
手術も色んな判断も、すごく迷うよね。
いくら調べても獣医ではないから専門的な事は解らないし
何がその仔の為に正しい選択なのか、解らないもの…
でもkotoraさんの判断が一番小虎君の為に正しかったよ。
我慢してても辛くなかったはず、甘えて幸せなお顔してるものね。
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私も数年前まで動物病院でも専門病院がある事を知りませんでした。
この辺りだと川崎?に、心臓の専門病院があるそうです。 お客様の猫がそこで治療を受けたそうですが、残念ながらそこでも助けられなかったとか。
心臓が悪くなると肺に水がたまるのよね。 母がそうでした。 利尿剤とかしか治療方法がなかったみたい。 (他にも悪い所があったからかな)
小虎君は今日の写真をみても苦しそうじゃないもの。
Kotoraさん達の愛情一杯受けて、小虎君も苦しさを感じてなかったんじゃないかなあ。
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kotoraさんすごいなあ。
よくこんなに調べて、向き合って、綴って。
そっか、専門医さんのところに行く、っていうところまでしかお話聞いていなかったけど、もう肺に水が溜まってたんだね…
猫はぎりぎりまで我慢する。
胸に刺さるわ。
ブランも我慢してたりするんだろうか…
私は今の病院で満足(いや、納得?)しているけど、後から振り返ったら「もっと設備の整ったところで診てもらえばよかった」って後悔する日がくるだろうか…
小虎くん、だいすきよ。
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迷ったよね。
たくさん迷ったと思う。
あの頃の私、本当にすごく迷ったもん。
割とホイホイと自分の人生決めてきたり
他人に聞いてみたりでさ・・・
初めて選択に悩んだことだった。
Kotoraさん大丈夫かな?
1年経って、書けるようになったと思って
書いたら、しんどくなったら、休憩してね。
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昨日に引き続いて読ませていただいております。
病名を知らないで対応するのと、病名を知って対応するとは違いますよね…。
ほんと、専門医の方がいて良かったですよね。
PDA、初めて知りました。
心音は心臓が頑張ってます!という感じの音に聞こえました。
私の場合は、実家のワンコが心臓に雑音がある子だったのですが(ゴン太です)、ドクドク音にザーザーって言ってる感じでした。
続きもシッカリ読ませていただきます。
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遅くなりましたが小虎君の一周忌
改めてご冥福を・・・・
一年前、私も父の事でバタバタしてて
あまり皆様の所にもお邪魔出来ていませんでした。
よく病気の事を調べられましたね。
全部読ませて頂きます。
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小虎ちゃんがんばったね。
Kotoraおねえちゃんたちもがんばったと思うのにゃあ。
先天的なものの場合・・・手術がいいのかどうか・・・なんだかよくわからないよ・・・成功するのか、手術したことで何か他に問題がおこるのか・・・いろんな可能性もあるよね・・・
手術できない時期にKotoraおねえちゃんのお家に来たことも、もしかしたら神さまが小虎ちゃんに精一杯にゃん生楽しむようにって思ったのかもしれないなぁ・・・ってふと思うよ。
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猫では珍しい病気なだけに、治療となると難しかったんだね・・・・
手術って、やっぱり猫では難しいと思う。
実際、うちが相談したときもそう言われた
うまくいく可能性はそんなに高くないけど、
費用は莫大だと・・・
その費用を違うことに使うほうがと・・・
でも、専門医にきちんと診断してもらえたことって救いになるよね
知れたからこそ、得たものは大きいと思います。
愛された小虎くん、とっても幸せだったね
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( i _ i )( i _ i )( i _ i )
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そうだった…
あの頃、海外組や関西組が変わらず暮らしてる様子に、ずいぶん慰められてたっけなぁ…
kotoraさんにもずいぶんちからづけてもらってたよね。
あんなに日本の事を心配して、悲しんでいたkotoraさんをこんな悲劇が襲うだなんて…
茫然としたの思い出したわ(ノ_・。)
PDAって人間の乳児の心臓手術の話ではよく聞くけど、猫で聞いたのは初めてかも。
本当に、猫ってギリギリまで症状表に出さないね。
苦しくないワケないと思うんだけど…(´・ω・`)
自分のカラダの状態に合わせて、無理の無い生活する事が出来る能力なんだろうけど、
無理をするのがデフォルトの人間や、犬、牛馬や驢馬とは、全く違う生き方で、
だから人間の立場では、ちょっと「えぇええ?!」Σ(゚д゚;)って感覚あるなぁ。
最後に専門医に会って、詳しい病状や状態がわかって、本当に良かったと思う。
不思議なものだな~と思うのは、
よくわかってない状態でも、結局、投薬はそれしかなかったとか、
仮に診断がついたからって手術を含めて出来る治療も限られていたと云う所かなぁ。。。
それは、ある意味、救いになったかもしれないし、あと、ちょっと漢方思い出したよ。
いや。決して手順も発想もなにも全然同じじゃないんだけど、
ただ、東洋医学と西洋医学ってカラダに対する姿勢が全然違うのに、
ギリギリの線で妙に似た動きをしたものだと、ひどく不思議に感じるなぁ。
「知る」という事に対する欲求って、どうしようもなく人の中にある。
知るって事は、救いにもなるし、人によっては新たな苦しみの原因にもなるけど、
kotoraさんは、本当にしっかり「知る」って事と向き合ってるのが素晴らしいと思う。
小虎くん、よくおしゃべりする子だったのよね。
お友達さん家で「トイレ?」と聞かれて、「うん」と応えてたイラストが忘れらんない( ´艸`)
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小虎さんの病気のことが、書けるようになったんですね。
きっと、同じ苦しみを持ってる猫さん、その御家族の参考となり、
Kotoraさんの記事がきっかけで、
助かる子がいるかもしれない。。。
じっくり、読ませて頂きます。